アメリカってどんな国?

アメリカ 7」 趙南哲


この国は自由の国だ
好きな時に 好きな所から先住民を追い出して広大な牧場にする自由
先住民が歯向かえばいつでも村を襲って焼き討ちする自由
皆殺しにした村人の首を槍に突き立てて鶏のように奇声をあげて踊る自由


胃腸薬や鎮痛剤のように銃を常備して 庭に入ったヤツの頭を撃ちぬく自由
交通違反をした有色人種は警官が警棒で袋叩きにしてもいい自由
口先ひとつで黒を白にした弁護士が横領する自由
奴隷から解放した黒人を奴隷と呼ばない奴隷扱いを続ける自由
黒人にも教育を受けさせて白人の良心をドラッグストアーで売る自由
ハリウッドをキリスト教のように世界に普及して莫大な寄付を集める自由
時折 政権や大統領の陰謀を暴いてピュリッツァー賞で有名人になる自由
数人の成功者が富を独り占めし 残りは気ままなホームレスになれる自由
巨大財閥がポケットマネーで施設に薄いスープや毛布をにこやかに配る自由
核兵器も大陸弾道弾も化学兵器も精密誘導弾もこの国だけが持つ自由
気にいった国が大量破壊兵器を持っても知らんぷりを決めこむ自由
気にいらない国が大量破壊兵器を持っているという口実で攻撃する自由
気にさわる政権を転覆させるためにカネや女や葉巻や武器を贈る自由


暗殺も謀略も侵略もテロではないと発表する報道官が突然辞任する自由
テロリストを匿っているというふれこみでミサイルを禿山に撃ちこむ自由
小さな国が寄り集まって決めたルールに賛成しておいて最後に離脱する自由
世界に汚い尻をむけ舌をだしてアカンベーをする演説に拍手を送る自由
アラブ系を監視し 拘束し 強制送還しておきながら市民社会を讃える自由
戦争に反対する国を恩知らずと罵り 経済援助を打ち切ると脅す自由
でっちあげた理由でとにもかくにも戦争を始めてしまう自由
ピンポイントを宣伝しながら市街にハイテク兵器をちゃっかり誘導する自由
日曜日に教会に行ったら殺人でも強盗でも侵略でも許される自由
砂漠を進軍する軍隊に牧師や神父を同行させて人を殺す痛みを癒す自由
デモクラシーを嫌がる口に無理やり押し込む自由を自由だとする自由
この国はまったく完璧な自由の国だ



詩画集 グッバイアメリカ


痛烈かつ痛快ですね